本試験日までにやるべきこと

一級建築士学科試験(7/12(日))が、いよいよ近付いてまいりました。そこで、これから本試験日までの勉強の仕方や心構えについて書きとめてみたいと思います。

基本的に、新しいことをする必要はありません。
自分が今までに学習してきた問題集などを徹底的に復習しましょう。可能ならば、今から全教科3周を目指します。その際、正答枝以外の選択枝についても丁寧に目を通しましょう。
あとは、自分自身の中でいつも間違ってしまう問題や苦手な問題などの弱点部分の見直し及び補強を行いましょう。

上記以外のことは、しなくていいです。
もう、時間は限られていますので、余計なことは考えずに、ひたすら復習して下さい。

本試験で、一つ注意というか、今から留意して頂きたいことは、とにかく「問題文をよく読む」ということです。極めて当然で基本的なことですが、猛勉強している人ほど、「こうくればこう」という直観が働きすぎて、問題文をよく読まずに誤答してしまうことが起こり得ます(このことは、『一級建築士受験 合格者たちの勉強法(荘司和樹)』にも書かれています)。

今まで、本気で勉強してきたのであれば、とにかく問題文をよく読み、ケアレスミスさえしなければ、十分に合格できる力は備わっています。結局のところ、最後は自分を信じるしかありません。

健康管理には十分に気を付けてお過ごし頂ければと思います。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)
問 換気設備・排煙設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. ボイラー室等の燃焼機器を使用する機械室の換気方式は、第3種換気とする。
  2. 置換換気(ディスプレイスメント・ベンチレーション)は、汚染物質が周囲の空気より高温又は軽量の場合に有効である。
  3. 隣接した二つの防煙区画において、一般に、防煙垂れ壁を介して一方の区画を自然排煙、他方の区画を機械排煙とすることはできない。
  4. 機械排煙設備において、天井の高さが3m未満の居室に設ける排煙口の設置高さ(下端高さ)は、一般に、天井から80cm以内、かつ、防煙垂れ壁の下端より上の部分とする。

 

(解答・解説)
  1. 頻出の選択枝です。本問は二級でもよく問われる内容です。ボイラー室等の燃焼機器を使用する機械室は、燃焼に必要な新鮮な空気の供給が必要です。よって、周辺の室等から汚染された空気が流入しないように、室内の圧力を正圧に保つ必要があります。そういう意味で、設問の第3種換気は室内が負圧になるので、適切ではありません。従いまして、誤った記述です。なお、室内を正圧に保つためには、第1種換気か第2種換気とする必要があります。
  2. 正しい記述です。置換換気(ディスプレイスメント・ベンチレーション)は、天井高さが高い空間への利用が適しています。
  3. 正しい記述です。一般に、設問のような防煙区画の境界部には、床まで到達する防煙シャッター等を設けなければなりません。
  4. 正しい記述です。やや難解な条文ですが、令126条の3第1項第三号( )内に記載されています。

以上のことより、答えは1.となります。

積算の基本問題

二級建築士学科試験が今度の日曜日(7/5)まで迫ってまいりました。泣いても笑っても、あと1週間です。最後まで悔いのないよう頑張って頂ければと思います。

今回は積算の問題です。二級では施工教科として出題されますが、一級では計画の教科として出題されます。基本的な内容ですので、よく確認しておきましょう!

 

学科Ⅰ(計画)(1級過去問 H26)
問 建築積算に関する次の記述のうち、建築工事建築数量積算研究会「建築数量積算基準」に照らして、最も不適当なものはどれか。
  1. 「計画数量」は、設計図書に表示されていない施工計画に基づいた数量をいい、仮設や土工の数量等がこれに該当する。
  2. 「所要数量」は、「定尺寸法による切り無駄」や「施工上やむを得ない損耗」を含んだ数量をいい、鉄筋、鉄骨、木材等の数量がこれに該当する。
  3. 窓、出入口等の開口部による型枠の欠除は、原則として建具類等の開口部の内法寸法で計算し、開口部の内法の見付面積が1か所当たり0.5㎡以下の場合は、原則として型枠の欠除はないものとする。
  4. 石材による主仕上げの計測・計算において、1か所当たりの面積が0.5㎡以下の開口部による石材の欠除については、原則として、ないものとする。

 

(解答・解説)
  1. 正しい記述です。
  2. 正しい記述です。
  3. 正しい記述です。
  4. 石材による主仕上げの計測・計算において、1か所当たりの面積が0.1㎡以下の開口部による石材の欠除については、原則として、ないものとしますので、誤った記述となります。
従いまして、答えは4.となります。

鉄筋コンクリート造の問題2(構造)

鉄筋コンクリート造の強度・靱性能に関する基本問題です。
せん断破壊、靱性、脆性、短柱、長柱などのキーワードの意味をよくおさえておきましょう。

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H22)
問 鉄筋コンクリート構造の柱部材の強度・靱性能に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 帯筋の拘束度合いが大きい場合、一般に、柱部材の軸方向の圧縮耐力は大きくなり、最大耐力以降の耐力低下の度合いは緩やかになる。
  2. 一般に、柱部材に作用する軸方向の圧縮力が大きいほど、せん断耐力は大きくなり、靱性能は低下する。
  3. 一般に、柱部材の内法寸法が短いほど、せん断耐力は大きくなり、靱性能は低下する。
  4. 一般に、柱部材の引張鉄筋が多いほど、曲げ耐力は大きくなり、靱性能は向上する。

 

 

(解答・解説)
  1. 正しい記述です。
  2. 正しい記述です。
  3. 正しい記述です。
  4. 一般に、主筋を増すと、曲げ耐力が増大しますが、靱性能を高めることにはなりません。ゆえに、誤った記述です。ちなみに、帯筋を増すことは、靱性能を高める効果があります。

従いまして、答えは4.となります。

令和二年度二級建築士製図試験課題について

ちょっと遅くなりましたが、今年の二級建築士製図試験の課題についての現時点における考察をしてみたいと思います。

6/10(水)にJAEICより、令和二年度二級建築士試験「設計製図の試験」の課題が発表になりました。

 

【課題名】
『シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい(木造2階建て)』

【要求図書】
  • 1階平面図兼配置図(縮尺1/100)
  • 2階平面図(縮尺1/100)
  • 2階床伏図兼1階小屋伏図(縮尺1/100)
  • 立面図(縮尺1/100)
  • 矩計図(縮尺1/20)
  • 面積表
  • 計画の要点等

 

近年の課題は、コンペとかコンクールみたいです。
今年の課題で、個人的に一番注目しているポイントは、フルバージョンの矩計図の復活です。その分、断面図がなくなりました。A2版という限られた製図用紙に描く関係上、どうしても敷地の大きさに制約を受けますが、断面図をなくして矩計図を復活させ、従来の図面構成に戻りましたので、昨年までよりも敷地を少し大きくすることができるようになりました。よって、今年の課題である(ちょっと面積が大きくなりそうな)シェアハウス併設住宅が可能となったのだと思われます。

最近の木造住宅課題の場合、延べ面積が200㎡を超えるような計画になることはほとんどなかったと思われますが、今年は基本的に200㎡以上での計画となるかもしれません(排煙計画等については、あくまでも課題文の要求によります)。

規模が大きくなると、当然、エスキスに要する時間も増えますし、作図時間も増えます(特に1階平面図兼配置図)。今の時期においては、2階床伏図兼1階小屋伏図の描き方の復習と矩計図の基本形の暗記に努めましょう。7月の第2週からは、エスキス主体の勉強方法にシフトチェンジします。8月に入ってからは、ひたすらエスキス~作図の反復練習(とういうか訓練)になりますので、その時期において、まだ伏図や矩計図が描けないということがないように、今のうちにしっかり学習しておきましょう。

あと、個人的に今年の課題に思うこととして、「高齢者夫婦の住まい」ということから、何となく既存の住宅を(単なるリフォームではなく)リノベーションして使うイメージがありますが、恐らく「新築」だと思われますので、その辺りの課題構成というか出題のされ方に興味があります。かつて一級の製図試験(確かH17年?)で出題されたような、リフォームを伴う課題の可能性もビックリ玉としてあるかもしれません。

いずれにしましても、木造住宅の課題として学習する内容に大きな違いはありませんので、くり返しになりますが、まずは伏図や矩計図などの基本図面の学習に徹しましょう。

今後も、本サイトにおいて、今年の課題についての留意事項等について考察していきたいと思っていますので、興味のある方は、たまに覗いてみて下さい。

防水工事の問題

下の問題はH26年の過去問ですが、難易度としては難しい部類に入ると思います。しかしながら、ほぼ同様の選択枝はH14年にも出題されています。H26年時点においては、12年前の過去問ということになります。そういう意味で、いかに過去問を学習することが重要かということが分かります。

 

学科Ⅴ(施工)(1級過去問 H26)
問 防水工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. シーリング工事において、鉄筋コンクリート造の建築物の外壁に設けるひび割れ誘発目地については、目地底にボンドブレーカーを使用せずに、シーリング材を充填する三面接着とした。
  2. シート防水工事において、合成樹脂系シートを用いた接着工法については、立上り部及び平場のシート張付けに先立ち、出隅角及び入隅角に成形役物を張り付けた。
  3. 塗膜防水工事において、補強布については、下地によくなじませ、しわや耳立ちが生じないように防水材で張り付けた。
  4. 改質アスファルトシート防水工事において、立上り部の防水層の末端部については、押え金物を用いて留め付け、ゴムアスファルト系シーリング材を充填した。

 

 

(解答・解説)

  1. 頻出の選択枝です。鉄筋コンクリート造の外壁のようなノンワーキングジョイントでは、3面接着とします。カーテンウォールのパネル回りのようなワーキングジョイントでは、2面接着とします。よって、正しい記述です。
  2. 難しい選択枝ですが、過去(H14)にも出題されています。設問のシート防水の場合、出入隅角はシート施工後に成形役物を張付けますので、誤った記述となります。
  3. 正しい記述です。なお、補強布の重ね幅は50mm程度とします。
  4. JASS8により、正しい記述です。

従いまして、答えは2.となります。

免震・制振構造に関する問題

今年の一級建築士学科試験まで、3週間を切りました。本試験では、基本問題をいかに取りこぼさずに得点できるかが合格のカギとなります。これからは、とにかく基本事項の確認を徹底していきましょう!(二級建築士学科試験までは、2週間を切っています。試験へ臨む方針としては一級と何ら変わりません。)

下の問題は免震・制振構造についての基本事項ですので、よく復習しておきましょう!

 

問 下記の記述の正誤を判定せよ。

(学科Ⅳ(構造)1級過去問)
【H27】
高さ60mを超える建築物であっても、耐久性等関係規定に適合し、かつ、国土交通大臣の認定を受けた構造方法であれば、免震構造にすることができる。

【H28】
免震構造用の積層ゴムにおいて、積層ゴムを構成するゴム1層の厚みを大きくすることは、一般に、鉛直支持能力を向上させるのに有効である。

【H29】
転倒モーメントによりアイソレータに大きな引張軸力が生じる場合は、天然ゴム系の積層ゴムアイソレータを採用する。

 

 

(解答・解説)
平成12年建告第2009号第2より、正しい記述です。

積層ゴムを構成するゴム1層の厚みを小さくすることは、一般に、鉛直支持能力を向上させるのに有効です。よって、誤った記述となります。

積層ゴムアイソレータに大きな引張力が作用すると、ゴムが引きちぎれてしまう可能性があります。一般に、アイソレータには大きな引張力が作用しないような設計とします。よって、誤った記述となります。

崩壊荷重を求める問題

下記の問題は、崩壊荷重を求める問題としては、一般的な難易度の問題だと思います。左右の柱の長さが異なったラーメン構造となっていますので、それぞれの塑性ヒンジにおける回転角が違う値になることには注意が必要です。

塑性解析系の問題は一級建築士試験特有の出題範囲ですが、一度、解法の手順を覚えてしまえば、トラス等の問題と同様に得点源となり得る分野です!!

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H27)
問 図-1のような水平荷重Pを受けるラーメンにおいて、水平荷重Pを増大させたとき、そのラーメンは、図-2のような崩壊機構を示した。ラーメンの崩壊荷重Puの値を求めよ。ただし、柱、梁の全塑性モーメントの値は、それぞれ400kN・m、200kN・mとする。

 

(解答・解説)

上記の変形角度が微小のときの考え方は、頻出事項ですので、よく確認しておきましょう。

法規の基本問題

法規の基本問題ですが、意外と「ん?」となるような構成だと思います。例によって、まずは法令集を使わずに、気軽に眺めてみて下さい。

 

学科Ⅲ(法規)(1級過去問 H28)
問 次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。

  1. レストランの調理室は、「居室」である。
  2. 地上3階建ての共同住宅における2階の床及びこれを支持するはりに鉄筋を配置する工事の工程は、「特定工程」である。
  3. 建築物に設ける消火用の貯水槽は、「建築設備」である。
  4. 延べ面積2,000㎡の警察署は、「特殊建築物」である。

 

 

(解答・解説)
  1. 法第2条第四号により、正しい記述です。
  2. 法第7条の3第1項第一号、令第11条により、正しい記述です。
  3. 法第2条第三号、法第35条により、正しい記述です。
  4. 警察署は、法第2条第二号、法別表第1(い)欄、令第115条の3のいずれにも該当しないため、「特殊建築物」ではないということになります。

従いまして、答えは4.となります。

消防設備系(環境・設備)の問題

学科Ⅱ(環境・設備)は、なかなか手強い教科だと思いますが、消防設備系の問題については、覚えてしまえば得点源になりやすい分野だと思います。
例によって、気楽に眺めてみて下さい。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)
問 防災設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 非常用の照明装置の予備電源には、蓄電池を照明器具に内蔵しない方式がある。
  2. 差動式熱感知器は、周囲が一定の温度以上になると火災信号を発する感知器である。
  3. 補助散水栓は、屋内消火栓のうち2号消火栓(広範囲型を除く。)と同等の放水量を有し、スプリンクラー設備へ配管接続する。
  4. 開放型スプリンクラーヘッドは、天井が高く種々の可燃物がある舞台部等に用いる。

 

 

(解答・解説)

  1. 非常用照明の予備電源には、蓄電池内蔵型と電源別置型がありますので、正しい記述です。
  2. 頻出の選択枝です。自動火災報知設備において、その周囲の温度が一定の温度以上に上昇したときに作動するのは「定温式熱感知器」です。急激な温度上昇が起こりやすい厨房など火気を使用する室に設けます。一方、設問の差動式熱感知器は、周囲の温度が一定の温度上昇率以上になったときに作動する感知器で、一般的な居室に設けます。よって、誤った記述となります。
  3. 正しい記述です。なお、設問の屋内の2号消火栓は、一般にホテルや病院などに設置されていて、一人で操作可能なものとなります。警戒区域半径は15mです。また、1号消火栓は、一般に工場や倉庫などに設置され、二人で操作し、警戒区域半径は25mです。
  4. 正しい記述です。スプリンクラー設備に関する基準については、消防法施行令第12条に規定されています。一般に、火災が発生すれば急激に燃え広がるような箇所(劇場の舞台部等)には、設問の開放型スプリンクラーヘッドが用いられます。

従いまして、答えは2.となります。

計画の基本問題

基本的に、1日1問の過去問を紹介しています。
力試しとして、気軽に挑戦してみて下さい。

 

学科Ⅰ(計画)(1級過去問 H24)
問 建築部品とモデュラーコーディネーションに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 一般に、特定の需要や特定のビルディングシステムを対象とした建築部品をクローズド部品といい、不特定多数の建築物を対象とした建築部品をオープン部品という。
  2. 建築部品等の呼び寸法は、一般に、製作寸法とは異なる。
  3. パネル状のものが並んで面をなす構成材群(畳、天井パネル等)は、一般に、シングルグリッドにしたがって配列すると構成材間の互換性が高くなる。
  4. 日本工業規格(JIS)のモデュラーコーディネーションは、モデュロールの寸法を基本として寸法体系が定められている。

 

(解答・解説)

  1. 正しい記述です。
  2. 例えば鉄筋径などの呼び寸法は、厳密な製作寸法とは異なります。よって、正しい記述です。
  3. 正しい記述です。
  4. モデュロールといえば、コルビュジェが提唱した人体寸法と黄金比とから作った建築的基本尺度です。JISのモデュラーコーディネーションは、ベーシックモデュールの100mmを基準としています。よって、誤った記述となります。

従いまして、答えは4.となります。