細長比についての補足

前回、有効細長比について考えてみました。
今回は、ちょっと補足してみたいと思います。

まず、「細長比」も「有効細長比」も公式は同じです。
「細長比」は一般的な概念であり、「有効細長比」は建築基準法で定められている定義となります。

ここで、建築基準法施行令第43条6項を見てみると、「有効細長比」とは、『断面の二次率半径に対する座屈長さの比である』ことが分かります。

また、木造の柱の有効細長比は150以下と決められています。

この、以下というのがメチャクチャ大事な概念となります。

何故、以下なのか。

前回考察したように、細長比は「小さいほど、太短く粘り強い」というものでした。ゆえに、以下なのです。もし、「以上」だと、材料が細長くなり、座屈しやすくなってしまいます。「以下」とすることで、材料が必要以上に細長くなってしまうことを制限しているのです。

以下に、建築基準法で定められている有効細長比を列挙してみます。

(木造)柱 → 150以下
(鉄骨造)柱 → 200以下 柱以外 → 250以下

これらから分かることは、木造の柱の規定が一番厳しいということです。ザックリ言うと、木造の柱は弱いのであまり細長くしちゃダメですよ、ということなのです。さらに、鉄骨造の柱はある程度強度があるので、木造よりは細長くしていいですし、柱以外、つまり「梁」などは、もっと細長くしていいですよ、ということを言っているのです。

ただし、制限値が決められていて、それらの値以下でなければならないというわけです。

以上のことは、繰り返しになりますが、細長比は小さいほど靭性が高い(粘り強い)ということと合致します。

ちなみに、鉄筋コンクリート造についての有効細長比の規定はありません(建築基準法上)。これは、通常のRC造であれば(極めて特殊な場合を除いて)、各部材が十分に太短く、座屈の影響をほとんど考えなくていいからです。高さが3mくらいだとして、木造の一般的な柱寸法は105角ですが、RC造だと600角ですから、RC造は極めて座屈しにくい構造であることがイメージできると思います。

有効細長比の問題

次の鉄骨造に関する記述について、正誤を判定してみましょう。

『有効細長比λが小さい筋かい(λ=20程度)は、中程度の筋かい(λ=80程度)に比べて塑性変形性能が低い。』

初見だと、非常に難解な文章に感じると思います。
この記述を解くためには「有効細長(ほそなが)比」と「塑性変形性能」の2つのキーワードの意味を理解する必要がありますが、とりあえず、細長い材料は曲がりやすく、変形性能は低いということを頭に入れておきましょう。

例えば割り箸のような細長い材料はすぐに曲がりやすい(座屈しやすい)ですが、同じ長さの割り箸でも太い棒だとすると曲がりにくく(座屈しにくく)なります。

有効細長比は、大きいほど細長い材料であることを意味し、小さいほど太短い材料であることを意味します。つまり、上記の記述の中で、λ=20とλ=80を比べると、20の方が小さいので、太短い材料であることが分かります。

また、「塑性変形性能」とは簡単に言えば「靭性」のことであり、もっと簡単に言うと「粘り強さ」のことです。靭性を理解するのによくイメージされるのが、鋼製の細長いバネと太短いバネです。どちらが粘り強いバネかというと、太短いバネの方が強靭であることがイメージ出来ると思います。

ゆえに、鉄骨造の柱においても、太短い方が粘り強いということが分かります。

すなわち、有効細長比が小さい方が太短く、塑性変形性能(粘り強さ)は大きいということになり、冒頭の記述は誤りということになります。

一応、数式的な解説も載せておきます。

下記の公式を見ると分子が小さいほど、また分母が大きいほど、細長比λは小さくなることが分かります。つまり、分子が小さくなるということは、座屈長さが小さく(短く)なるということであり、分母が大きくなるということは、部材断面が大きくなるということを意味しています。すなわち、太短い材料ほど、細長比は小さくなり(→座屈しにくい)、細長い材料ほど、細長比は大きくなる(→座屈しやすい)ということが分かります。

 

細粒分含有率の問題

建築系の資格試験において、次のような選択枝は頻出です。

『細粒分含有率が低い地盤では、液状化現象が起こりにくい。』

この選択枝の正誤を判断するためには、「細粒分含有率」と「液状化現象」という2つのキーワードの意味を把握する必要があります。

【細粒分含有率(=細粒土含有率)】
簡単に言うと、粘土・シルトを細粒分と言います。
つまり、「細粒分含有率が低い」とは、ザックリ言うと粘土分が低いということになります(ちなみに、砂・れきを粗粒分と言います)。
結果として、細粒分含有率が低い地盤とは砂質地盤と考えることができます。

【液状化現象】
主として砂質地盤で起こるとされています。
比較的均一な粒径の砂質地盤が、地震動などの振動によって流動化してしまう現象のことを言います。つまり、粘土地盤では極めて起こりにくいということになります。

以上のことを念頭に、もう一度、上述の選択枝を考えてみます。

『細粒分含有率が低い地盤では、液状化現象が起こりにくい。』

すなわち、細粒分含有率が低い地盤→粘土分が低い→砂質分が高い→砂質地盤ということであり、液状化現象は砂質地盤で起こりやすいので、この選択枝は誤りということになります。

あと、他にも液状化現象が起こりやすい条件というのがあって、「N値が15以下」とか「20m以浅の沖積層」とか「細粒分含有率が35%以下」等々です。

ただし、勉強の仕方というか覚え方のコツとしましては、まずはザックリと大枠を押さえて、それから詳細を脳に染み込ませていくようなイメージで取り組んでいきましょう。

本試験では、初めて目にするような選択枝も出題されますが、意外とそういうときに役に立つのが、ザックリと覚えている事柄だったりします。

今回は、以上となります。

構造計算ルートの問題

今一度、構造計算ルートの確認をしておきましょう。
大まかには、次のようにまとめられます。

ルート1(許容応力度計算及び屋根ふき材等の構造計算)
ルート2(許容応力度等計算)
ルート3(保有水平耐力計算)

ややこしいのは、建物規模等により上記ルートの選定が行われるのですが、鉄骨造の場合はルート1が1-1と1-2に分かれ、鉄筋コンクリート造の場合はルート2が2-1と2-2に分かれることです。さらに、鉄骨造のルート1-1と1-2の違いには階数や柱スパンが関係し、鉄筋コンクリート造のルート2-1と2-2の違いには壁量や柱量が関係します。

さらにさらに、上記3つのルートの他に限界耐力計算や時刻歴応答解析などがあります。

どの構造計算にするのかは法20条第1項において、第一号~四号建築物として、それぞれ規定がありますが、一級建築士試験において問われる箇所は、ある程度パターン化されています。
下記のような問題をよく確認しておきましょう。

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H28)
問 鉄筋コンクリート構造における建築物の耐震計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. 「ルート1」の計算において、コンクリートの設計基準強度を24N/mm2としたので、設計基準強度による割増し係数αを用いて、単位強度の割増しを行った。
  2. 「ルート2-1」の計算において、柱及び梁の靱性を確保するため、地震力によって生じるせん断力を割増した設計用せん断力が、安全性確保のための許容せん断力を超えないことを確かめた。
  3. 「ルート3」の計算において、両端ヒンジとなる梁部材の設計用せん断力の割増し係数を1.2とし、両端ヒンジとならない梁部材の設計用せん断力の割増し係数を1.1とした。
  4. 「ルート3」の計算において、崩壊メカニズム時にせん断破壊した柱部材の種別をFDとした。

 

 

(解答・解説)
  1. 正しい記述です。ちなみに、割増し係数αの最小値は1.0であり、最大値は√2です。
  2. 正しい記述です。なお、柱・梁の設計用せん断力(QD)は、QL+nQEもしくはQ0+Qyのうち、小さい方の値を用います。ここで、QL:長期荷重によるせん断力、QE:一次設計用地震力によるせん断力、n:割増係数、Q0:単純支持としたときの長期荷重によるせん断力、Qy:梁の両端が曲げ降伏するときのせん断力 です。
  3. 両端ヒンジとなる梁の割増し係数(n≧1.1)よりも両端ヒンジとならない梁の割増し係数(n≧1.2)の方が大きくなります。よって、誤った記述となります。
  4. 正しい記述です。ちなみに、FDの意味ですが、Fはフレーム(柱・梁)、Dは靱性の「判定」です(Aが靱性最大、Dが靱性最小)。

従いまして、答えは3.となります。

ガスト影響係数の問題

1級の学科Ⅳ(構造)では、地震層せん断力係数やガスト影響係数に関する問題が、よく出題されます。下の問題は、それらに関する標準レベルの難易度だと思われます。

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H26)
問 建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. 建築物の固有周期が長い場合や地震地域係数Zが小さい場合には、地震層せん断力係数Ciは、標準せん断力係数C0より小さくなる場合がある。
  2. ガスト影響係数Gfは、一般に、建築物の高さと軒の高さとの平均Hに比例して大きくなり、「都市化が極めて著しい区域」より「極めて平坦で障害物がない区域」のほうが大きくなる。
  3. 高さ13m以下の建築物において、屋根ふき材については、規定のピーク風力係数を用いて風圧力の計算をすることができる。
  4. 多雪区域においては、暴風時又は地震時の荷重を、積雪荷重と組み合わせる必要がある。

 

 

(解答・解説)
  1. Ci=Z・Rt・Ai・C0であることより、例えば、Z=0.7、Rt=1.0、Ai=1.0、C0=0.2を代入すると、地震層せん断力係数Ciは最大でも0.14となります。設問は、正しい記述です。
  2. ガスト影響係数Gfは、「極めて平坦で障害物がない区域」よりも「都市化が極めて著しい区域」のほうが大きくなり、建築物の屋根の平均高さHが低いほうが大きくなります。よって、誤った記述となります。
  3. 正しい記述です。
  4. 正しい記述です。例えば、多雪区域における地震時の場合は、G+P+0.35S+Kとなります。
従いまして、答えは2.となります。

鉄筋コンクリート造の問題2(構造)

鉄筋コンクリート造の強度・靱性能に関する基本問題です。
せん断破壊、靱性、脆性、短柱、長柱などのキーワードの意味をよくおさえておきましょう。

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H22)
問 鉄筋コンクリート構造の柱部材の強度・靱性能に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 帯筋の拘束度合いが大きい場合、一般に、柱部材の軸方向の圧縮耐力は大きくなり、最大耐力以降の耐力低下の度合いは緩やかになる。
  2. 一般に、柱部材に作用する軸方向の圧縮力が大きいほど、せん断耐力は大きくなり、靱性能は低下する。
  3. 一般に、柱部材の内法寸法が短いほど、せん断耐力は大きくなり、靱性能は低下する。
  4. 一般に、柱部材の引張鉄筋が多いほど、曲げ耐力は大きくなり、靱性能は向上する。

 

 

(解答・解説)
  1. 正しい記述です。
  2. 正しい記述です。
  3. 正しい記述です。
  4. 一般に、主筋を増すと、曲げ耐力が増大しますが、靱性能を高めることにはなりません。ゆえに、誤った記述です。ちなみに、帯筋を増すことは、靱性能を高める効果があります。

従いまして、答えは4.となります。

免震・制振構造に関する問題

今年の一級建築士学科試験まで、3週間を切りました。本試験では、基本問題をいかに取りこぼさずに得点できるかが合格のカギとなります。これからは、とにかく基本事項の確認を徹底していきましょう!(二級建築士学科試験までは、2週間を切っています。試験へ臨む方針としては一級と何ら変わりません。)

下の問題は免震・制振構造についての基本事項ですので、よく復習しておきましょう!

 

問 下記の記述の正誤を判定せよ。

(学科Ⅳ(構造)1級過去問)
【H27】
高さ60mを超える建築物であっても、耐久性等関係規定に適合し、かつ、国土交通大臣の認定を受けた構造方法であれば、免震構造にすることができる。

【H28】
免震構造用の積層ゴムにおいて、積層ゴムを構成するゴム1層の厚みを大きくすることは、一般に、鉛直支持能力を向上させるのに有効である。

【H29】
転倒モーメントによりアイソレータに大きな引張軸力が生じる場合は、天然ゴム系の積層ゴムアイソレータを採用する。

 

 

(解答・解説)
平成12年建告第2009号第2より、正しい記述です。

積層ゴムを構成するゴム1層の厚みを小さくすることは、一般に、鉛直支持能力を向上させるのに有効です。よって、誤った記述となります。

積層ゴムアイソレータに大きな引張力が作用すると、ゴムが引きちぎれてしまう可能性があります。一般に、アイソレータには大きな引張力が作用しないような設計とします。よって、誤った記述となります。

鉄筋コンクリート造の問題(構造)

1級の構造でよく出題される内容は、不静定構造物やその物終局時の応力算定についてです。また、強度と剛性が絡んだ文章題も頻出です。

基本的に、
許容応力度の検討には「強度」が関係し、
たわみの検討には「剛性」が関係します。
詳しくはコチラ

これらの部分を、まずはしっかりと押さえておきましょう!

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H25)
問 鉄筋コンクリート構造の部材の性能に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 柱の曲げ剛性を大きくするために、引張強度の大きい主筋を用いた。
  2. 耐力壁のせん断剛性を大きくするために、壁の厚さを大きくした。
  3. 梁の終局せん断強度を大きくするために、あばら筋の量を増やした。
  4. 耐力壁の終局せん断強度を大きくするために、コンクリートの圧縮強度を大きくした。

 

(解答・解説)
  1. 原則として、鉄筋の引張強度を大きくしても、鉄筋のヤング係数は変わらないので、部材の曲げ剛性には影響しません。このことは、鉄骨造の梁のたわみに関する鉄骨材の特徴として頻出の事項です。また、RC造において、部材の曲げ剛性EIの算定は、ヤング係数(E)も断面二次モーメント(I)もコンクリート断面の値を用います。よって設問は誤った記述ということになります。
  2. 正しい記述です。なお、せん断剛性は、せん断弾性係数Gと断面積Aに比例します。また、鉄およびコンクリートのせん断弾性係数は、ヤング係数の約0.4倍です。
  3. 正しい記述です。なお、RC造の「梁」において、長期荷重に対してひび割れを許容しない場合は、せん断補強筋(梁:あばら筋)の効果を考慮しませんので、注意が必要です。
  4. 正しい記述です。設問の内容は、一応、平19国交告594号第4三ハの表中から読み取ることができますが、かなり難解です。表中の耐力壁のせん断耐力Qwの式から、コンクリートの設計基準強度Fcが大きくなると、このときの耐力壁のせん断耐力が大きくなることが分かります。

従いまして、答えは1.となります。

※鉄とコンクリートそれぞれの強度とヤング係数の関係については、頻出の内容ですので各材料の「応力度-ひずみ度曲線」を、もう一度よく確認しておきましょう!

鉄骨材料についての問題

昨日、JAEICより二級建築士製図試験の課題が発表となりました。

「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい」
(木造2階建て)

コンペとかコンクールみたいな課題ですが、原則的には、各種図面をA2版の製図用紙に描き切れるくらいの規模の木造2階建てということですので、まずは、きちんと伏図とか矩計図などの基本を押さえておきましょう。

この時期、二級の製図課題が発表されると、いよいよ建築士試験の戦いが始まるなあという気がします。

さあ、いよいよこれからです。
頑張っていきましょう!!

 

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H28)
問 鋼材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 建築構造用TMCP鋼は、化学成分の調整と水冷型熱加工制御法により製造され、板厚が40mmを超え100mm以下の材であっても、40mm以下の材と同じ基準強度が保証されている。
  2. SN材C種は、B種の規定に加えて板厚方向の絞り値の下限が規定されており、溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張応力が発生する角形鋼管柱の通しダイアフラム等に用いられている。
  3. SN490B材は、SS400材に比べて、降伏点、引張強さ、ヤング係数のいずれも大きい。
  4. ステンレス鋼は、約11%以上のクロムを含む合金鋼であり、炭素鋼に比べて、耐食性、耐火性等に優れている。

 

 

(解答・解説)

  1. TMCP(Thermo-Mechanical ControlProcess)鋼についての正しい記述です。
  2. 建築構造用圧延鋼材(SN材)には、A種、B種、C種があり、A種は塑性変形性能を期待しない小ばりや間柱等に使用されます。B種は降伏比の上限が規定されていて、塑性変形性能が保証されています。使用箇所は柱・大梁等の構造耐力上主要な部位となります。C種はB種の性能に加え、板厚方向の引張力に対する性能の規定があり、通しダイアフラムに使用されます。よって、正しい記述となります。なお、B種もC種もシャルピー吸収エネルギーの規定があり、靱性が保証されていて、頻出の事項です。最近は、二級建築士試験でも出題されます。
  3. 鋼材のヤング係数は、強度に関わらず一定(2.05×105N/mm2)であることを覚えておきましょう。よって、誤った記述です。
  4. 正しい記述です。ステンレス鋼は、一般的な炭素鋼に比して、耐食性にも耐火性にも優れます。

従いまして、答えは3.となります。

鉄骨造の強度と剛性の問題

鉄骨造における強度と剛性について、H28年に出題された次の一文の正誤を判断しつつ、考察してみたいと思います。まずは、必要最小限の文字と数式で、概念的に解説しようと思います。
(「強度→壊れにくさ」「剛性→変形のしにくさ」ということも、念頭に置いてみて下さい。)

学科Ⅳ(構造)(1級過去問 H28(鉄骨造))から、

問 次の正誤を判定せよ。
曲げ剛性に余裕のあるラーメン構造の梁において、梁せいを小さくするために、SN400B材の代わりにSN490B材を用いた。

 

【解説】
まず、曲げ剛性はEIで表すことができます。
E:ヤング係数(N/mm2
I:断面二次モーメント(mm4

これに余裕があるわけですが、鋼材のヤング係数は強度に関わらず一定ですから、すなわち断面二次モーメントに余裕があると解釈できます。

通常、鉄骨造のたわみ量は、柱スパンの1/300以下にしなければなりませんので、それをクリアするための梁せいが必要になりますが、断面二次モーメントに余裕がある、すなわち梁せいを、もうちょっと小さくできると言っているわけです(梁せいが小さくなると、当然たわみやすくなりますが、それでも1/300以下を保っているということです)。

ところが、梁せいが小さくなってしまうと、たとえたわみ量をクリアしていたとしても、今度は強度が不足してしまいます(小さくなったんで)。

よって、引張強度400N/mm2の鋼材から、490N/mm2の鋼材へ代えたという設問の記述は正しいということになります。

以下に手書きの解説を付します(見にくくてすみません)。

最後に頻出の留意事項について記したいと思います。
よく、「たわみを小さくするために、鋼材の強度を上げた」というような設問を目にすることがありますが、断面形状等その他の条件が同じ場合、これは誤りとなります。

なぜなら、上述のたわみの式からも分かるように、たわみを小さくするためには曲げ剛性EIを大きくしなければなりませんが、鋼材については、強度を大きくしてもヤング係数Eは変わらないので(下図参照)、たわみ量に影響しないからです。具体的にたわみを小さくするためには、断面二次モーメントを大きくするとか、作用する荷重を小さくするとか、スパンを短くするとかが必要になります。

以上、よく吟味して頂ければと思います。