色彩の問題

学科Ⅱ(環境・設備)において、色彩系の問題は得点源になりやすい傾向にあります。
下のような問題は、是非とも得点したい問題の一つです。
ある意味、合否を左右する問題と言えるかもしれません。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H25)
問 色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. JISの安全色の一般的事項における「緑」の表示事項は、「指示」及び「用心」である。
  2. マンセル表色系において、マンセルバリューが5の色の視感反射率は、約20%である。
  3. 物体の表面色の見え方は、見る方向によって異なることがある。
  4. 視認性は、注視している対象がはっきり見えるか否かに関する属性であり、視対象と背景色との間の明度差の影響を大きく受ける。

 

(解答・解説)
  1. JISの安全色の一般的事項における「緑」の表示事項は、「安全」、「避難」、「衛生」・「救護」、「進行」です。設問の「指示」、「用心」は「青」の表示事項ですが、JIS改正に伴い、「用心」が「誘導」に変更になっていますので注意が必要です。よって、誤った記述となります。よく出題される組合せとして、「緑」-「進行」「青」-「指示」がありますので、確認しておきましょう。
  2. 色の反射率ρは、マンセルバリュー(明度)をVとすると、ρ≒V(V-1)(%)(ただし、Vが3~8の場合)で略算できます。よって、設問の場合は、ρ≒5(5-1)≒20%となり、正しい記述です。
  3. 正しい記述です。
  4. 視認性に対する明度差の影響は大きいので、正しい記述です。
従いまして、答えは1.となります。

本試験日までにやるべきこと

一級建築士学科試験(7/12(日))が、いよいよ近付いてまいりました。そこで、これから本試験日までの勉強の仕方や心構えについて書きとめてみたいと思います。

基本的に、新しいことをする必要はありません。
自分が今までに学習してきた問題集などを徹底的に復習しましょう。可能ならば、今から全教科3周を目指します。その際、正答枝以外の選択枝についても丁寧に目を通しましょう。
あとは、自分自身の中でいつも間違ってしまう問題や苦手な問題などの弱点部分の見直し及び補強を行いましょう。

上記以外のことは、しなくていいです。
もう、時間は限られていますので、余計なことは考えずに、ひたすら復習して下さい。

本試験で、一つ注意というか、今から留意して頂きたいことは、とにかく「問題文をよく読む」ということです。極めて当然で基本的なことですが、猛勉強している人ほど、「こうくればこう」という直観が働きすぎて、問題文をよく読まずに誤答してしまうことが起こり得ます(このことは、『一級建築士受験 合格者たちの勉強法(荘司和樹)』にも書かれています)。

今まで、本気で勉強してきたのであれば、とにかく問題文をよく読み、ケアレスミスさえしなければ、十分に合格できる力は備わっています。結局のところ、最後は自分を信じるしかありません。

健康管理には十分に気を付けてお過ごし頂ければと思います。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)
問 換気設備・排煙設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  1. ボイラー室等の燃焼機器を使用する機械室の換気方式は、第3種換気とする。
  2. 置換換気(ディスプレイスメント・ベンチレーション)は、汚染物質が周囲の空気より高温又は軽量の場合に有効である。
  3. 隣接した二つの防煙区画において、一般に、防煙垂れ壁を介して一方の区画を自然排煙、他方の区画を機械排煙とすることはできない。
  4. 機械排煙設備において、天井の高さが3m未満の居室に設ける排煙口の設置高さ(下端高さ)は、一般に、天井から80cm以内、かつ、防煙垂れ壁の下端より上の部分とする。

 

(解答・解説)
  1. 頻出の選択枝です。本問は二級でもよく問われる内容です。ボイラー室等の燃焼機器を使用する機械室は、燃焼に必要な新鮮な空気の供給が必要です。よって、周辺の室等から汚染された空気が流入しないように、室内の圧力を正圧に保つ必要があります。そういう意味で、設問の第3種換気は室内が負圧になるので、適切ではありません。従いまして、誤った記述です。なお、室内を正圧に保つためには、第1種換気か第2種換気とする必要があります。
  2. 正しい記述です。置換換気(ディスプレイスメント・ベンチレーション)は、天井高さが高い空間への利用が適しています。
  3. 正しい記述です。一般に、設問のような防煙区画の境界部には、床まで到達する防煙シャッター等を設けなければなりません。
  4. 正しい記述です。やや難解な条文ですが、令126条の3第1項第三号( )内に記載されています。

以上のことより、答えは1.となります。

消防設備系(環境・設備)の問題

学科Ⅱ(環境・設備)は、なかなか手強い教科だと思いますが、消防設備系の問題については、覚えてしまえば得点源になりやすい分野だと思います。
例によって、気楽に眺めてみて下さい。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)
問 防災設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 非常用の照明装置の予備電源には、蓄電池を照明器具に内蔵しない方式がある。
  2. 差動式熱感知器は、周囲が一定の温度以上になると火災信号を発する感知器である。
  3. 補助散水栓は、屋内消火栓のうち2号消火栓(広範囲型を除く。)と同等の放水量を有し、スプリンクラー設備へ配管接続する。
  4. 開放型スプリンクラーヘッドは、天井が高く種々の可燃物がある舞台部等に用いる。

 

 

(解答・解説)

  1. 非常用照明の予備電源には、蓄電池内蔵型と電源別置型がありますので、正しい記述です。
  2. 頻出の選択枝です。自動火災報知設備において、その周囲の温度が一定の温度以上に上昇したときに作動するのは「定温式熱感知器」です。急激な温度上昇が起こりやすい厨房など火気を使用する室に設けます。一方、設問の差動式熱感知器は、周囲の温度が一定の温度上昇率以上になったときに作動する感知器で、一般的な居室に設けます。よって、誤った記述となります。
  3. 正しい記述です。なお、設問の屋内の2号消火栓は、一般にホテルや病院などに設置されていて、一人で操作可能なものとなります。警戒区域半径は15mです。また、1号消火栓は、一般に工場や倉庫などに設置され、二人で操作し、警戒区域半径は25mです。
  4. 正しい記述です。スプリンクラー設備に関する基準については、消防法施行令第12条に規定されています。一般に、火災が発生すれば急激に燃え広がるような箇所(劇場の舞台部等)には、設問の開放型スプリンクラーヘッドが用いられます。

従いまして、答えは2.となります。

製図試験でも問われる環境・設備の基本問題

先日、二級建築士製図試験の課題が発表になりましたが、ちょっと見落としていた点がありました。今年は、フルバージョンの矩計図が復活したんですね。その分、断面図が無くなりました。個人的には、バランスのとれた図面配分になったと思います。まずは、矩計図の暗記をしましょう!その上で、平面計画によって、梁や大引き、根太の方向が変わってきますので、それらに対応できる応用力を養っていきましょう!!

さて、今回の学科過去問紹介の範囲は、一級の製図試験で求められる『計画の要点』において、頻出の内容です。一級の製図試験では、平成21年より、A2版の図面の他に、A3版の『計画の要点』なる設計主旨的な記述が求められるようになりました。その記述において、特に最近はパッシブデザインについて問われることが多いです。そういう意味で、環境・設備に限らず、他の全ての学科試験の勉強が、製図試験に直結していると言えます。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H24)

問 日照・日射・採光に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. ライトシェルフは、室内照度の均斉度を高めるとともに、直射日光を遮蔽しながら眺望を妨げない窓システムである。
  2. 春分の日と秋分の日において、水平面上に立てた鉛直棒の直射日光による影の先端の軌跡は、ほぼ直線となる。
  3. 窓面における日照・日射の調整について、一般に、水平ルーバーは西向き窓面に、垂直ルーバーは南向き窓面に、設置すると効果的である。
  4. 高所において、鉛直や鉛直に近い向きで設置される窓を頂側窓といい、特に北側採光にすると安定した光環境が得られる。

 

(解答・解説)

  1. 設問はライトシェルフについての正しい記述です。
  2. この設問は頻出問題です。太陽と影の動きについては、必ず確認しておきましょう。正しい記述です。
  3. 一般に夏期における南面は太陽高度が高くなるので、水平ルーバーが効果的です。また、太陽高度が低くなる西面においては、垂直ルーバーが効果的です。よって、誤った記述となります。
  4. ハイサイドライト(頂側窓)についての正しい記述です。

従いまして、答えは3.となります。

環境工学の用語の問題

環境・設備の教科は構造力学と同じように、公式を覚えなければならない問題やグラフを読み取る問題が多く出題されます。全ての教科に言えることだと思いますが、初見では解きにくさを感じても、10回くらい繰り返して解くと得意になります。極めて個人的な感覚ですが、初めはクリア出来なかったステージが、繰り返し練習することによってスキルが上がり、クリア出来るようになるという(アクション)ゲームの感覚に似ています。

とにかく苦手な分野をひたすら繰り返し勉強し、苦手な問題をひたすら繰り返し解き直し、少しずつ少しずつ得意な分野と問題を増やしていきます。ひたすらこの繰り返しです。

正直なところ、時にはくじけそうになることもあると思いますが、一度「やる」と決めたからには、なにはともあれ最優先事項は「勉強」です。先日も、本校卒業生が質問しに来ていましたが、最後は人生相談的な話になってしまいました。

みんな悩んでいます。自分も悩んでいます。悩みだらけの日々です。
今度、飲みに行きましょう!!

と、いうことで、過去問紹介です。

 

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)
問 環境工学における用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. PMVは、室内の温熱感覚に関係する、気温、放射温度、相対湿度、気流速度、人体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。
  2. 照度は、目で見た明るさに直接的な関わりがあり、屋内照明器具による不快グレアの評価に用いられる。
  3. プルキンエ現象は、暗所視において、比視感度が最大となる波長が短い波長へずれる現象である。
  4. 残響室法吸音率は、残響室内に試料を設置した場合と設置しない場合の残響時間を測定して、その値をもとに算出する試料の吸音率である。

 

 

(解答・解説)

  1. PMV(Predicted Mean Vote:予測平均温冷感申告)は、設問の通り、温熱環境指標です。こういうPMVのようなワードは、必ず何の頭文字なのか、その英単語を調べてみましょう。例えば、Voteは「投票する」という意味ですから、何人かの申告(投票)によって平均(Mean)的な寒暖の感じ方を予測した(Predicted)指標ということが分かります。
    あと、関連してPPD(Predicted Percentage of Dissatisfied:予測不快者率)という指標もあります。これは、何%(Percentage)の人がその環境に不満(Dissatisfied)を持っているかを予測したものです。
  2. 不快グレアの評価に用いられるのは、照度ではなく、輝度です。輝度の単位は、cd(カンデラ)/㎡またはlm(ルーメン)/(㎡・sr(ステラジアン))さらにはnt(ニト)で表されます。
    なお、照度は目で見た明るさに間接的な関わりがあり、単位は、lx(ルクス)またはlm/㎡で表されます。
    よって、設問は誤った記述となります。
  3. 「プルキンエ現象」は頻出用語です。通常の出題のされ方としては、暗い所では、青色を明るく感じ、赤色を暗く感じるというものだと思いますが、設問では色を波長の長短で表すことにより、難度が上がっています。
  4. 残響室法吸音率についての説明は、設問の通り正しい記述となります。あと、残響時間の計算式として、セービン(Sabine)の式も頻出ですので、よく押さえておきましょう。
    セービンの式 T = 0.161V/A
    T:残響時間(秒) V:室の容積(㎥) A:室の吸音力(㎡)
    (なお、A=室内の平均吸音率×室内の総表面積(㎡))

よって、答えは2.となります。

ザイデルの式

今回は、環境・設備から、換気問題におけるザイデルの式を使った基本的な問題を取り上げてみたいと思います。本問の内容は、近年において、二級建築士試験でも問われる傾向にありますので、しっかりとご確認頂ければと思います。ちなみに、この種の難易度の問題を、如何に取りこぼさずに得点できるかということが、本当に大切なことだと考えます。

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)

定常状態における室内の二酸化炭素濃度を上限の基準である1,000ppm以下に保つために、最低限必要な外気の取入量として最も適当な値は、次のうちどれか。ただし、人体一人当たりの二酸化炭素発生量は0.024㎥/(h・人)であり、人体から発生した二酸化炭素濃度は直ちに室全体に一様に拡散するものとし、外気の二酸化炭素濃度を400ppmとする。また、隙間風は考慮しないものとする。

1. 20㎥/(h・人)
2. 30㎥/(h・人)
3. 40㎥/(h・人)
4. 50㎥/(h・人)

 

【解説】

ザイデルの式より、

Q=k/(Pi-Po)〔㎥/h〕

Q:必要換気量〔㎥/h〕

k:一人当りの二酸化炭素発生量〔㎥/(h・人)〕
→ 設問より、0.024〔㎥/(h・人)

Pi:室内空気の二酸化炭素許容濃度
→ 設問より、1,000ppm×10-6=0.001

Po:外気の二酸化炭素濃度
→ 設問より、400ppm×10-6=0.0004

以上のことより、Q=0.024/(0.001-0.0004)=40〔㎥/(h・人)〕となり、答えは3.となります。

ポイントは、ppmで与えられている数値を小数に直して代入するということです。ここで、1ppm=10-6(百万分率)であることは、もう一度確認しておきましょう。

あと、10,000ppm=1%という関係も押さえておきましょう。二酸化炭素の許容濃度が1,000ppm(0.1%)であるということと、一酸化炭素の許容濃度が10ppm(0.001%)であるということは、よく出題されます。
10,000ppm=1%という関係を覚えておくと、ppmと%との換算が楽になります。