作図手順と作図精度について

本日は、一級建築士製図試験の作図手順や精度について考えてみたいと思います。

近年、一級での作図図面の構成は3平面図+断面図の計4図面です。これに面積表が加わります。(近年と書いたのは、平成21年から平成26年までの図面構成は2平面図+断面図+床伏図の計4図面だったからです。)

今の時代は本当に恵まれていて、YouTubeなどで検索すると、合格者が実際に図面を描いている様子を見ることができます。特に今年初受験の方は、絶対に見ておいたほうがいいです。

普通は、1階平面図兼配置図→2階平面図→3階平面図→断面図→面積表のように、1面ずつ順番に描いていく人が多数であると思われます。自分も最初はそうでした。しかし、上記の映像を見てみると、補助線・寸法線・柱・コアなどは1~3階まで同時に描き上げていることが分かります。

最初のうちは慣れも必要になりますが、1面ずつ完成させていくよりも、3面同時に完成させていくほうが、圧倒的に時間効率がいいです。(この概念は、いずれエスキスにおいても必要となります。1~3階までを同時に考えます。)

※上記の「同時に」という表現についてですが、これは例えば1~3階までのコアのみを描き上げてしまうという意味です。

あと、上記のように同時に完成させていくと、物理的に定規の往復回数が減りますので、図面(用紙)が汚れにくくなります。
個人的な大まかな作図手順を以下に示しますので、参考にしてみて下さい。いずれは、何枚か練習していく中で、各自自分に合った手順となるようにカスタマイズされていくはずです。

『躯体補助線→寸法線→柱→間仕切壁補助線→外壁→コア(階段・エレベーター)→内壁→什器類→外構→文字・補足コメント・防火関連記号→断面図→面積表』

上記の中で、断面図・面積表を描くタイミングは、もっと早い段階でもいいかもしれません。また、最近は法令について厳格になってきていて、特に防火関連に関する記号の抜けは致命的な大減点(場合によっては即失格)となります。

 

◎卒業生から質問の多いフリーハンドについて記します。

まず、フリーハンドで作図していいかどうかについてですが、これはもう全く問題ありません。そもそも課題文に「フリーハンドでもよい。」とズバリ書いています。自分も受かった年はフリーハンドで作図しました(柱もテンプレートを使わずにフリーハンドでした)。ただし、寸法線や断面図など、長い線を引くときは、定規を使ったほうが速くキレイに描けます。

次に精度についてですが、当然、フリーハンドで描くと、線を曲がらないように真っ直ぐ上手く描くのは難しいことです。しかし、精度を保つことはそれほど難しいことではありません。
実は、製図試験における「上手さ」と「精度」には明確な違いがあると思っています。
すなわち、精度の高い図面は壁の幅やテーブル・イスなど什器類の大きさがほとんど一定ですが、精度の低い図面は壁の幅も什器類の大きさもバラバラです。

フリーハンドで描くときは、特にこの点に注意して下さい。上手く描く必要はありませんが、精度は出来るだけ高く保つことを意識して下さい。要するに、スケール感を大事にするということです。手描きである以上、CADのような精度にはならないわけですが、例えばイスの座面の大きさが1m角くらいだったり、壁の幅が500mmくらいだったりすると、明らかに違和感があります(スケールアウトしているということ)。

以上の点に留意して、作図練習してみて下さい。