過去問研究のススメ①

一級建築士製図試験の学習において、時間を持て余すというか、何をしたらいいか分からなくなる時があると思います。そういう時のオススメは、過去問研究です。今年の課題の参考になるのは、H23年とH27年です。H11年も該当しますが、旧試験制度のものですし、入手は難しいかもしれません。

各年度の課題文を読むことも、めちゃくちゃ大事なことです。正確に課題文を読み取った上で、標準解答例を眺めてみて下さい。

H23年は「介護老人保健施設」でした。この年のポイントとして、個人的には大きく3つ挙げられると思っています。

一つ目は、接道条件です。普通に考えれば、西側道路からのメインアプローチを設け、東側道路には通用口を計画することになると思います。さらに、「車寄せ」が要求されていますので、ロータリー形式を取り入れた駐車スペースの採用が一般的であると思われます。この辺りの計画性の良否が、まずは重要なポイントだったと考えています。

二つ目は、厨房から食堂までの動線計画です。ここを軽視したプランは、極めて合格しにくかった年だったと記憶しています。

三つ目は、食堂・デイルームの設置階です。食堂・デイルーム、機能訓練室、厨房の階指定は、1階又は2階となっており、これらの設置階をどのように考えるかが、二つ目の動線計画と連動して大きなキモでした。ちなみに、JAEICの標準解答例によると、二例とも厨房が1階で、食堂・デイルーム及び機能訓練室が2階になっています。

以上、他にも色々ありますが、まずは上記のポイントがクリアされていれば、合格しやすかった年だったんじゃないかと、個人的には考えています。

あと、今年の課題において、卒業生から質問が多いのがゾーニングについてです。まあ、今年の課題に限った話ではありませんが、特に今年のような課題におけるゾーニングは考え辛い箇所があるかもしれません。

H23年の標準解答例によると、利用者ゾーンと管理者ゾーンが、それほど明確には仕切られていないことが分かります。管理ゾーン内に職員更衣室が設置されている2階においては、明確な「仕切り」が存在しますが、1階と3階においては、曖昧な「仕切り」となっています。これは、常にボランティア・スタッフ等が施設内を巡視している状態であり、即時の対応を必要とする療養・医療系の施設であることに大きく起因していると思われます。

また、多機能便所の数についての質問も多いです。基準階以外の階には、原則、多機能便所2箇所以上+一般便所のセットで考えた方が無難です。ただし、要介護者だけが使用する諸室しかないような場合は、多機能便所のみの複数設置でもいいと思います。こういう所こそ、過去問研究してみて下さい。

次回は、H27年の過去問について考察したいと思います。