緩やかなゾーニング

一級建築士製図試験において、ゾーニングの概念が分かってくると、エスキスが加速度的に上手くなります。簡単そうで、簡単にはいかないのがゾーニングです。理解してしまえば、どうってことはないことなんですけどね。

通常の建築物において、最もちゃんとゾーニングされていなければならない箇所は、共用ゾーンと管理ゾーンです。

頭では分かっているつもりでも、いざエスキスしてみると、管理ゾーンの中に共用ゾーンがあったり、共用ゾーンの中に管理ゾーンがあったりしてしまいます。

卒業生の過去のエスキスを見ていると、例えば管理ゾーンの中に多目的便所があったり、共用ゾーンの中に職員用更衣室があったりします。もちろん、課題文でそのように要求されているのであれば別ですが、建築常識・一般常識として、多目的便所は利用者が使うものであり、共用ゾーン内にあるべきですし、職員用更衣室は共用ゾーンを経ることなく、管理ゾーン内にあるべきです。

ただし、今年の課題「高齢者介護施設」においては、それらのゾーンの区分けが曖昧なグレーゾーンが多く存在します。特に基準階タイプにおいて、その傾向は顕著です。介護を必要とされる方を、とっさに助けなければならない事態を考えると、「緩やかなゾーニング」にすべき箇所が出てきますが、この辺りの空間構成的な考え方が、特に初受験生にとっては分かり辛いかもしれません。

結局は、課題文にヒントが隠されていることが多いのですが、ゾーニングに迷ったときは、利用者と管理者、双方の立場になって考えてみるといいと思います。あと、先日書いたチビコマゾーニングを軽視せず、いくつかのパターンを考えてみるということと、チビコマゾーニングを活かした倍コマにすることを、必ず守って下さい。せっかく、チビコマでゾーニングしたのに、倍コマで全く関係のない室配置になってしまっていることが多々ありますので要注意です!

最後に、H23年やH27年の過去問集は市販もされていますので、共用と管理に絞って、ゾーニングを眺めてみることをおススメします。