空間構成について(追記あり)

建築技術教育普及センター(JAEIC)から毎年発表されている合格基準の中で、「空間構成」という項目があります。H21年の大幅な一級建築士製図試験の改正の際、中央建築士審査会のとりまとめとして、この「空間構成」に足切り点を設定する旨が発表されました。すなわち、まずはここを突破しないと、採点の俎上に載らないということです。ランクⅢの場合、ここに抵触しているといっていいと思います。ランクⅣの場合、基本的には図面の未完成や建ぺい率違反などが挙げられると思います。

昨年の試験結果においては、JAEICより、以下のような詳しいランクⅢとⅣの根拠が示されました。

  • 設計条件に関する基礎的な不適合:「要求されている室の欠落」や「要求されている主要な室等の床面積の不適合」
  • 法令への重大な不適合:「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、防火区画(特に吹抜け部の1階部分の区画)」や「直通階段に至る重複区間の長さ」等
  • その他建築計画に基本的な問題があるもの:「吹抜けの計画(吹抜けとなっていないもの)」等

昨年は、2つ目の項目の防火関係について、かなり厳しくジャッジされたと認識しております(意外と構造部分については甘かったような?)。
1つ目と3つ目については、「空間構成」の範疇だと言えます。

ここで、JAEICより発表されている「空間構成」の項目を列挙し、それぞれの意味するところを解説させて頂きます。

①建築物の配置計画
敷地の中に、どのように建物を配置するかという一番基礎となる重要な計画ですが、意外とここを軽視しがちです。例えば、施設利用者用・車いす使用者用・サービス用の駐車場や駐輪場、屋外広場などの設置スペースを確保し、さらに周辺環境による建物へのアプローチを考慮した上で、建物の配置位置を決定します。当然、ここには建築面積なども関わってきますし、敷地の中にムダな用途不明のスペースがある場合はNGとなります。

②ゾーニング・動線計画
めちゃくちゃ重要です。ある意味、これがキモと言ってもいいかもしれません。通常は、利用者ゾーン・共用ゾーン・管理者ゾーンに分かれます。昨年の課題でいうと、以下のようになります。

(利用者ゾーン)
展示関連諸室やアトリエ関連諸室からなる教育・普及部門
(共用ゾーン)
吹抜けのあるエントランスホールやカフェ・ショップからなる共用部門
(管理者ゾーン)
事務室・会議室・荷解き室からなる管理部門、及び設備スペース

これらのゾーン(部門)が、空間や用途としてキチンと分けられているかどうかということがゾーニング計画であり、それらを結ぶ人の動きの効率を考えることが動線計画です。

③要求室等の計画
要求されている室が全て計画されていて、要求されている床面積等をクリアした上で、室の用途に応じた計画となっている必要があります。例えば、通常、学校の教室は整形な無柱空間として計画しますが、レストランなどは室形状がL字で有柱であったとしても問題ないはずです。あと、無柱の大空間の室形状等もこの項目の範疇となります。

④建築物の立体構成等
吹抜けや2層分の天井高を必要とする大空間などの立体的な構成計画の他に、屋上庭園を配置することによる各階相互の整合性などを考えます。また、近年においては、面積調整のためのピロティ配置を回避させるために、通行の用途等で使用する箇所(風除室の前等)以外をピロティとする場合は、床面積に参入しなければならない旨が付記されています。つまり、各階に用途不明のピロティをむやみに作ることはNGとなります。

以上となりますが、一番難しいというか、自分の中で腑に落ちる計画ができるようになるまで時間を要した項目は、②のゾーニング・動線計画です。あと、①も自分のエスキス計画の中では、当初、意外と抜けが多かったと記憶しています。

なお、ランクⅡとなる要因の考察については、後日、書き連ねてみたいと思いますので、よろしくお願い致します。

ちなみに、前にも書きましたが、自分は製図試験の勉強では、「ウラ指導」と「一級とるぞ!.Net」のお世話になりました。特に合格した年は、ウラ指導一本でした。当サイトにリンクがありますので、ご活用下さい。

(追記)
極めて個人的な見解では、上記②を大きくゾーニングと捉え、その他の①③④を空間構成というふうに考えています。どういうことかというと、JAEICのアナウンスによれば、ゾーニングは空間構成の中に据えられていますが、その「ゾーニング」と「空間構成」を分けて考えるということです。なぜ、このような考え方をするかというと、これまた極めて個人的な見解ですが、過去の合格図面を見てきた経験上(自分のも含めて)、ゾーニングに対しての採点は少々甘いように感じるからです。余程おかしなゾーニングになっていない限り、他の①③④(特に③と④)がしっかりしていれば、基本、合格しているように思われます。②でやってはいけない(減点が大きい)ミスは、利用者→管理→利用者のようなゾーンまたぎの動線計画です。これは、かなり厳しく見られる傾向にあります。あと、③において、最も重要なことを書き忘れましたが、利用者・共用の諸室を、とにかくゆったりと計画しさえすれば、管理の諸室はどうでもいいです(もちろん限度はありますが)。

まとめますと、ゾーニングはそこそこでも、他の空間構成がしっかりしていれば受かるということです。特に各ゾーンを階ごとにまとめるフロアゾーニングにこだわる必要性は低い傾向にあります。
以上、今後の学習に役立てて頂ければと思います。
(※追記を少し修正しました。R2.5.23)

 

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