令和3年度一級建築士製図試験について

先日12/24(金)に、令和3年度一級建築士製図試験の合格発表がありました。
ざっくり自分なりに総括してみたいと思います。

ランク割合は次のようになっています。

ランクⅠ 35.9%
ランクⅡ 6.3%
ランクⅢ 26.9%
ランクⅣ 30.9%

ここ数年の特徴を踏襲したものとなっています。
この結果から分かることは、まずは何が何でもランクⅢとⅣを回避する必要があるということです。ランクⅢとⅣさえ回避できれば、あとはほぼランクⅠとなり、ⅠとⅡの違いは、ほんの僅かな差で、減点勝負の結果と考えることができます。

今年は試験元から、ⅢとⅣの該当事項が発表されています。

  • 設計条件に関する基礎的な不適合:「要求している主要な室等の床面積の不適合」、「道路高さ制限への適合が確認できる情報の未記載」
  • 法令への重大な不適合:「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、「防火区画(異種用途区画、面積区画、竪穴区画等)」、「道路高さ制限」等

その他に、今年の課題の敷地においては、東西の2面道路となっていましたが、東側道路が歩道付きの幅員8m(駅につながる表記あり)で、西側が歩道なしの4m道路でした。このことより、メインのアプローチ動線は東側、サブは西側と考えることができます。

ホントにざっくりですが、これら上記の事柄が出来ていれば、ⅢとⅣはまず間違いなく回避できたはずです。

あとは、PSなど、描け(書け)と言われているものが全て描かれて(書かれて)いれば、ランクⅠとなります。

今年の課題は与条件が緩やかな設定となっていて(延べ床面積の範囲が示されていなかったり、戸数が「以上」となっていたり等)、計画的には非常に自由なものとなっていた印象です。であるがゆえに、例年以上に建物の設計における基本事項の出来不出来が合否を分けたと考えられます。

試験元から発表される2つの標準解答例なるものは、例年、今一なことが多いのですが、今年は2案とも無難というか、理にかなったものとなっています(極めて個人的な見解ですが)。これら2つの解答例を見ることで、やっていいことと、ダメなことの境界が見えてきます。

例えば、建物形状が正形であることに、必要以上にこだわる方を見かけることがありますが、今年の標準解答例①を見ると、この程度の凹凸は許容されていることが分かります(私自身、合格図面の建物形状はデコボコでした)。

それよりも、課題の与条件を守りつつ、利用者の使い勝手を考えた空間構成となっているかが重要となります。自分もそうでしたが、不合格図面の中には、独りよがりの計画となってしまっているものも少なくありません(詳しくはコチラ)。

私自身、合格してみて分かったことですが、プランが多数派だろうが、少数派だろうが、受かるときは受かります。合格率とか、そのときの趨勢とか、不確定要素も若干あるかもしれませんが、とにかく、課題の与条件を満たし、そして建築常識や一般常識を満たし、その上で必要なもの全てが描(書)かれていれば受かる試験です。

以上、参考にしてみて下さい。

建築事例系の問題3

一級建築士試験の学科Ⅰ(計画)は、マジで苦手でした。
というか、今も苦手です。
その原因は、建築事例の問題にあります。

個人差はあろうかと思いますが、ご賛同頂ける方は多いのではないかと思われます。一級だと、計画教科20問中、7~11問が建築事例の問題です。

正直なところ、どうやって点数をとったらいいのか、未だによく分かっていません。ある程度は過去問を勉強することで対応できますが、それだけでは、んもう、手も足も出ないような場合が多々あります(あくまでも自分の場合)。

とりあえず、1問解いてみましょう。

(令和2年度一級建築士試験 学科Ⅰ(計画)から)
問 事務所ビルに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. ジョンソン・ワックス・ビル(アメリカ、1936年)の2層吹抜けの執務スペースでは、天井付近が広がった樹木状の柱や柱頭まわりの天窓、ハイサイドライトによって、内部に自然を再現している。
  2. フォード財団本部ビル(アメリカ、1967年)は、ビル内部に豊かな植栽が施されたアトリウムをもち、各フロアの執務スペースはアトリウムをL字型に囲むように配置されている。
  3. 丸の内ビルディング(東京都、2002年)の高層階のオフィスゾーンは、中央にアトリウムを設け、事務室沿いの廊下をアトリウムに面して配置しており、その廊下から建築物のどこの位置に自分がいるのかを把握することができる。
  4. ROKI Global Innovation Center(静岡県、2013年)は、執務スペースが階段状に積層する立体的なワンルーム空間に、ガラスをはめこんだ木と鉄のハイブリッドトラスの屋根をかけ、自然光を通すフィルターを使用した天幕を設けている。

資格学校だと、建築事例に特化した冊子が渡され、めちゃくちゃ重宝します。独学だと、とりあえずネットで各建物の画像とかを調べるところから始まります。個人的には、手間はかかりますが、自分で調べた方が圧倒的に記憶に残る印象を持っています。地道ではありますが、やはり普段から新建築を読んだり、学会賞の情報を仕入れたり、建築物に興味を持っておく必要があるのだと思います。

そして、ここからが個人的な懸案事項なのですが、以上のような努力を積み重ねたとしても、本試験で出題される建築事例が、今まで見たことも聞いたこともないということがしばしばあるのです。圧倒的に努力不足と言われればそれまでですが、例えば上記の問題で、丸の内ビルディングの高層階にアトリウムはないということを知らなければなりません。まあ、知ってる人にとっては、何を今さらな問題なのかもしれませんが、建築事例の問題は、他の教科に比べて、何というか、考える手がかりというか、とっかかりみたいなものがないように思えるのです。

四枝択一ですから、一枝か二枝、知ってる選択枝があれば、試験を解くテクニックとして、消去法で何とかなる場合ももちろんあります。が、四枝ともサッパリ分からない(知らない)ということが、結構な頻度で起こるのです(あくまでも自分の場合)。

一級建築士の学科試験は5教科ありますが、本試験直後、計画以外の教科は、「難しかった」とか「簡単だった」という感想を持つことができますが、計画の教科は、自己採点するまで、一体自分は何点くらいとれているのか、さっぱり見当がつかないという状況でした(あくまでも自分の場合)。

まあ、突き詰めれば、人によって得手不得手はあるわけで、建築事例の問題に限った話ではないのかもしれませんが、あくまでも自分の場合は、建築事例の問題が苦手でした(です)。

結局、何が言いたいのか、どうすればいいのか、全く分からない文章となってしまいましたが、上記の問題の答えは、3.が誤りということになります。他の選択枝は全て正しい記述となります。

以上、よろしくお願い致します。

細長比についての補足

前回、有効細長比について考えてみました。
今回は、ちょっと補足してみたいと思います。

まず、「細長比」も「有効細長比」も公式は同じです。
「細長比」は一般的な概念であり、「有効細長比」は建築基準法で定められている定義となります。

ここで、建築基準法施行令第43条6項を見てみると、「有効細長比」とは、『断面の二次率半径に対する座屈長さの比である』ことが分かります。

また、木造の柱の有効細長比は150以下と決められています。

この、以下というのがメチャクチャ大事な概念となります。

何故、以下なのか。

前回考察したように、細長比は「小さいほど、太短く粘り強い」というものでした。ゆえに、以下なのです。もし、「以上」だと、材料が細長くなり、座屈しやすくなってしまいます。「以下」とすることで、材料が必要以上に細長くなってしまうことを制限しているのです。

以下に、建築基準法で定められている有効細長比を列挙してみます。

(木造)柱 → 150以下
(鉄骨造)柱 → 200以下 柱以外 → 250以下

これらから分かることは、木造の柱の規定が一番厳しいということです。ザックリ言うと、木造の柱は弱いのであまり細長くしちゃダメですよ、ということなのです。さらに、鉄骨造の柱はある程度強度があるので、木造よりは細長くしていいですし、柱以外、つまり「梁」などは、もっと細長くしていいですよ、ということを言っているのです。

ただし、制限値が決められていて、それらの値以下でなければならないというわけです。

以上のことは、繰り返しになりますが、細長比は小さいほど靭性が高い(粘り強い)ということと合致します。

ちなみに、鉄筋コンクリート造についての有効細長比の規定はありません(建築基準法上)。これは、通常のRC造であれば(極めて特殊な場合を除いて)、各部材が十分に太短く、座屈の影響をほとんど考えなくていいからです。高さが3mくらいだとして、木造の一般的な柱寸法は105角ですが、RC造だと600角ですから、RC造は極めて座屈しにくい構造であることがイメージできると思います。

有効細長比の問題

次の鉄骨造に関する記述について、正誤を判定してみましょう。

『有効細長比λが小さい筋かい(λ=20程度)は、中程度の筋かい(λ=80程度)に比べて塑性変形性能が低い。』

初見だと、非常に難解な文章に感じると思います。
この記述を解くためには「有効細長(ほそなが)比」と「塑性変形性能」の2つのキーワードの意味を理解する必要がありますが、とりあえず、細長い材料は曲がりやすく、変形性能は低いということを頭に入れておきましょう。

例えば割り箸のような細長い材料はすぐに曲がりやすい(座屈しやすい)ですが、同じ長さの割り箸でも太い棒だとすると曲がりにくく(座屈しにくく)なります。

有効細長比は、大きいほど細長い材料であることを意味し、小さいほど太短い材料であることを意味します。つまり、上記の記述の中で、λ=20とλ=80を比べると、20の方が小さいので、太短い材料であることが分かります。

また、「塑性変形性能」とは簡単に言えば「靭性」のことであり、もっと簡単に言うと「粘り強さ」のことです。靭性を理解するのによくイメージされるのが、鋼製の細長いバネと太短いバネです。どちらが粘り強いバネかというと、太短いバネの方が強靭であることがイメージ出来ると思います。

ゆえに、鉄骨造の柱においても、太短い方が粘り強いということが分かります。

すなわち、有効細長比が小さい方が太短く、塑性変形性能(粘り強さ)は大きいということになり、冒頭の記述は誤りということになります。

一応、数式的な解説も載せておきます。

下記の公式を見ると分子が小さいほど、また分母が大きいほど、細長比λは小さくなることが分かります。つまり、分子が小さくなるということは、座屈長さが小さく(短く)なるということであり、分母が大きくなるということは、部材断面が大きくなるということを意味しています。すなわち、太短い材料ほど、細長比は小さくなり(→座屈しにくい)、細長い材料ほど、細長比は大きくなる(→座屈しやすい)ということが分かります。

 

資格学校と独学(学科試験の場合)

【学科試験の場合】
資格学校に通うと、資格学校独自のアレンジ問題を解くことが出来ますし、資格学校の学習スケジュールに則って勉強を進めて行けばいいという気楽さがあります。参考書や問題集などの教材も豊富ですし、小テストや模試を受けることで、各自の弱点分野の把握や補強を行うことができ、分からないところは質問することができます。ただし、授業料は高額です。資格学校の授業内容が、その額に見合った内容かどうかということは、人それぞれで大いに判断が分かれるところだと思います。

独学の場合、授業料なるものは一切かかりません。せいぜい問題集の費用くらいです。ただし、自分の弱点部分の把握や学習の進め方など全てを自分自身で行っていく必要があります。が、極めて個人的な見解ですが、資格学校に通うにしても、独学でいくにしても、1日最低3時間の学習時間は確保しなければなりませんので、自分で自己管理できるという人は、独学で全く問題ないと思われます。

あとは、各自の考え方次第です。

100%独学でもいいでしょうし、まず1年目は資格学校に通ってみて、ダメだったら2年目は独学にしてみるとか、最初は独学で、後で資格学校にしてみるとか、100%資格学校とか、いろいろなパターンが考えられると思います。

ただ、結局のところ、過去問を勉強するという大前提に変わりはありません。資格学校に通おうが、独学だろうが、結局は過去問をベースに学習していくことに変わりはないのです。

この辺りは大学の受験勉強に似ています。

資格学校に通うのであれば、やっぱりお金の問題が大きいと思いますし、受講生を合格させるために行っていることとは言え、営業等からの様々な勧誘があることは、ある程度覚悟しなければなりません(頻度や内容については各資格学校で違うと思います)。あと、自分も数年間、某資格学校で講師をしていましたが、少なくとも自分の周りの講師陣は(自分も含めて)、それこそ全力で受講生を合格させるために取り組んでいました。念のため。

独学の場合は、基本、自由なので、余程自分を厳しく律していかないと勉強を全くしない日が何日も続くことになります(まあ、学校に通っていても同じようなことは言えますが)。

以上のことを踏まえ、自分に合った勉強スタイルを考えてみて下さい。

細粒分含有率の問題

建築系の資格試験において、次のような選択枝は頻出です。

『細粒分含有率が低い地盤では、液状化現象が起こりにくい。』

この選択枝の正誤を判断するためには、「細粒分含有率」と「液状化現象」という2つのキーワードの意味を把握する必要があります。

【細粒分含有率(=細粒土含有率)】
簡単に言うと、粘土・シルトを細粒分と言います。
つまり、「細粒分含有率が低い」とは、ザックリ言うと粘土分が低いということになります(ちなみに、砂・れきを粗粒分と言います)。
結果として、細粒分含有率が低い地盤とは砂質地盤と考えることができます。

【液状化現象】
主として砂質地盤で起こるとされています。
比較的均一な粒径の砂質地盤が、地震動などの振動によって流動化してしまう現象のことを言います。つまり、粘土地盤では極めて起こりにくいということになります。

以上のことを念頭に、もう一度、上述の選択枝を考えてみます。

『細粒分含有率が低い地盤では、液状化現象が起こりにくい。』

すなわち、細粒分含有率が低い地盤→粘土分が低い→砂質分が高い→砂質地盤ということであり、液状化現象は砂質地盤で起こりやすいので、この選択枝は誤りということになります。

あと、他にも液状化現象が起こりやすい条件というのがあって、「N値が15以下」とか「20m以浅の沖積層」とか「細粒分含有率が35%以下」等々です。

ただし、勉強の仕方というか覚え方のコツとしましては、まずはザックリと大枠を押さえて、それから詳細を脳に染み込ませていくようなイメージで取り組んでいきましょう。

本試験では、初めて目にするような選択枝も出題されますが、意外とそういうときに役に立つのが、ザックリと覚えている事柄だったりします。

今回は、以上となります。

少しずつ、無理をせず

お疲れ様です。久しぶりの更新となります。
勤めていた建築系専門学校が閉校となり、現在、自分は民間の建設会社にお世話になっております。今一度、実際に建築の会社に勤めてみて、改めて働きながらの勉強の大変さを実感しているところです。

建築士を目指す、特に独学の方にとって、本サイトがほんの少しでもお役に立てればと思い、また書き連ねていこうと思っています。

先日、令和3年度の二級建築士製図試験の合格発表がありました。
今年の試験では、超特大のビックリ玉が出題され、受験生を苦しめました。
それは、二級建築士試験史上初となる傾斜地だったことです。
一級の試験でさえ、傾斜地の出題はほとんどなかったはずです。

正直なところ、こういう出題の仕方は好きでありません。
努力に努力を重ねた者の努力を踏みにじるような悪意さえ感じます。
何故、このような出題となったのか。
極めて疑問に思います。

しかしながら。
厳しいようですが、これが建築士試験というものだと割り切るしかありません。
受験生にとっては、本当に大変なことですが、どんなに理不尽な出題のされ方をしようとも、黙ってそれを受け入れ、乗り越えていくしかないのです。

今回、残念な結果となってしまった受験生のみなさんへ。

今年の試験は、事故のようなものと割り切って下さい。
本気で今年合格するために一生懸命に努力したのであれば、例年であれば間違いなく合格していたはずです。大丈夫です。来年こそは絶対に合格できます。

今は、心折れ、何も手に付かない状況かもしれません。
特に角番だった方の心労は、相当なものであると推察します。

まず、今は、何も考えず、全てを忘れ、心穏やかに年末を過ごすことに全力を傾けましょう。

そして、年が明けて、少し心の傷が癒えたなら、また少し勉強する気力が芽生えたのなら、少しずつ、少しずつ出来ることから始めていきましょう。

絶対に努力が報われる日は来ます!
明けない夜はありません!!

 

令和二年度の製図試験について(総括)

今さらですが、令和二年度の建築士製図試験に合格されたみなさん、誠におめでとうございました。

一級建築士製図試験の秋田県における合格者は10名でしたが、そのうち2名は、うちの専門学校の卒業生でした。

ここで、令和二年度の製図試験における合格図面の傾向を、以下に極めて個人的に分析してみたいと思います。

【二級建築士製図試験】
「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい(木造2階建て)」
敷地内に建築できない箇所があったり、要求された室名が少しややこしかったりしましたが、難易度としては難しくない課題であったと思います。合格図面の傾向としては、大枠の設計条件①~③を満たしつつ、各図面の整合性がとれていることが挙げられます。特に、伏図と矩計図の精度については厳しく見られたと思っています。近年の傾向として、二級の場合は、構造的な部分がかなり重要視されていると思っています。逆に言うと、計画的な部分においては結構なミスがあっても受かっている印象です。あと、「図面のキレイさ」というものが、一級の製図試験に比して、合否に影響しているように思えます。

【一級建築士製図試験】
「高齢者介護施設」
もはや課題文がA2版ということはデフォルトのようです。課題文の読み取りだけで30分くらいは必要です。近年の傾向として、地盤の断面図が示されるようになり、地盤状況に応じた基礎形状や地盤改良について考えなければならなくなりました。加えて、計画の要点において、略図を用いた説明が求められ、計画・構造・設備についての明確な設計意図と、それぞれの整合性が厳しく問われます。

今年度のポイントは、何と言っても「ユニット型」だったということに尽きると思います。個人的な見解として大きく合否を分けた箇所は「ユニット玄関」の計画であったと考えています。課題文の要求としては、ユニットA~C及び居宅サービスの玄関をそれぞれ専用に配置しなければなりませんでした。つまり、玄関が4つ必要だったということです。ここが曖昧な計画においては、極めて合格しづらい状況であったと思われます。他にも、「法的採光」や「廊下の有効幅員」、採用した耐震計算ルート、インフルエンザやノロウイルス対策についての要求等々、プチびっくり玉が幾つかありました。

が、やはり今回の一番のポイントは「ユニット型」の介護施設であったということです。まずは、課題文が一番に要求していることを押さえることが最重要です(今回の「ユニット玄関の計画」や平成29年のリゾートホテルにおける「客室の眺望」など)。近年は、ランクⅢとⅣの割合が大きく、未完・法令違反・空間構成の足切りの場合は、容赦のない措置が講じられている印象です。

 

以上、簡単ではありますが、極めて個人的な見解でした。

示力図と連力図

今回は、トラスの図式解法を理解する上で、大事な基礎知識となる「示力図」と「連力図」について解説したいと思います。年を越してしまうと、こういう基礎的な事項を勉強する時間の確保が難しくなりますので、今のうちに復習しておくことをおススメします。

なお、極めて個人的な見解ですが、後々のことを考えて、トラスの解法においては、図式解法(節点法)と切断法(算式解法)の両方を理解しておいた方が良いと思われます。トラスの問題においては、一級でも二級でも、難易度に差はほとんどありません。

早速ですが、下の図1の合力(大きさ・方向・位置)を図式解法によって求めます。

まず、合力の大きさと方向を求めます。
下図のようにP1の終端とP2の始端を合せます。

そして、P1の始端とP2の終端を繋ぐと、合力Rの大きさ(矢印の長さ)と方向が求まります。

次に、この合力の作用する位置を求めるために、示力図なるものを描きます。

示力図とは上図のように、任意点Oを定め、点OとP1,P2の始端・終端とを①~③の極線で結んだものです。この示力図を参考にして、以下の手順で連力図を描いていきます。

(1)図1において、P1の任意点A上に示力図中の極線①を平行移動させます。

(2)同じく点A上に極線②を平行移動させ、P2の延長線との交点を点Bとします。

(3)点B上に極線③を平行移動させ、極線①との交点を点Cとします。

(4)この点Cが合力Rの作用線が通過する位置となります。ゆえに、図1における合力(大きさ・方向・位置)が求まったことになります。端的に言うと、点Cは示力図の極線①と極線③の交点となり、この交点を求めるために、一連の手順を踏んでいるということになります。

(5)ちなみに、連力図における補助線等を全て消去すると下図のようになります。

 

最後に、興味のある方は、下の問題を解いてみて下さい。

※問題図で言えば、示力図における極線①と極線④の交点を求めるために連力図を描くことになります。以上の考え方は、トラスの図式解法において、とても重要な基本事項となります。

 

来年の学科試験に向けて

卒業生の方から、来年の学科試験合格に向けて、今から何をすべきかという質問を受けましたので、以下にまとめてみたいと思います。

今の時期においては、1級も2級も共通だと思います。

すなわち、ズバリ「力学」と「法規」です。

力学においては、基本項目について、当サイトの過去ログをご参照下さい。まずは、「モーメント」と「曲げモーメント」の違い等について、明確にしておきましょう!(モーメントは外力、曲げモーメントは応力(内力)を意味します。)

そして、極めて単純な「単純梁」のM図とQ図の基本事項を押さえておきましょう!(詳しくはコチラ

1級・2級共通の出題として、3ヒンジ系ラーメン構造とトラス構造の問題があります。次回から、これらの問題の過去問を実際に解いてみたいと思いますが、いわゆる静定構造物の問題については、必ず得点できるように今から勉強しておく必要があります。

力学を苦手とする卒業生は比較的多いですが、力学は最終的には最も安定的な得点源となり得ますので、諦めずに何度も解き直すようにして下さい。

次に法規ですが、法規を億劫に思う卒業生も多いです。

法規の勉強を億劫に思う一番の原因は、法令集を引かなければならないということだと思います。そこで、オススメなのが、「法規のウラ指導」という書籍です。この問題集は、過去問ごとに関係する条文が記載されていますので、いちいち法令集を引かなくても流し読み出来ます。特に、法規の1周目の勉強に威力を発揮する書籍だと思っています。読んだことがない人は、是非一度読んでみて下さい。

法規教科の最終的な目標は、他の教科と同じように、法令集を引かなくても問題を解けるようになることです。全ての問題を法令集なしで解くことは難しいかもしれませんが、慣れてくると7割方の問題は法令集を引かなくても解けるようになります。

矛盾するようですが、2周目からは、何度も何度も法令集を引きます。一度見た条文には、必ずマーカーしておくことを忘れないようにして下さい。何度も何度も法令集を引いていると、よく見る条文と、そうでない条文が分かってきます。何度も何度も法令集を引いていると、そのうち、よく見る条文の条番号が自然に頭に入り、内容も覚えるようになります。この行為は、出来れば今のうちから始めるべきです。来年のゴールデンウィークの頃に、スイスイ法令集が引けるようになっていれば、ほぼ合格は間違いありません!!

以上、とりあえず、来年の学科試験に向けて、今すぐ着手すべき事項を挙げてみました。

長丁場ではありますが、頑張りましょう!!!