組み合わせ応力度の問題 パート1

H26年 一級建築士試験 学科Ⅳ(構造)からの出題です。

圧縮応力度と曲げ応力度との、いわゆる組み合わせ応力度の問題です。
よく目にする問題で、難易度としては、それほど難しくないと思います。

今回は、問題を解くのではなくて、この問題の意味について、少し深く考えてみたいと思います。

まず、下向きの鉛直方向の外力Pは、長期荷重を表しています。長期荷重とは、建築物に常時作用している荷重のことで、固定荷重や積載荷重などのことです。
一方、右向きの水平方向の外力Qは、短期荷重を表しており、臨時(非常時)の荷重、すなわち地震力や風圧力(台風など)のことです。

つまり、何事もない平和なときの建物には、鉛直方向の下向きの荷重のみが作用し、地震や台風などが発生した場合において、水平方向の力が作用することになります。

従いまして、上記の図-1の状況は、常時荷重に非常時荷重が組み合わさった状態ということが分かります(普通に考えれば、地震時ということになります)。

ここで、図-2の意味について考えてみたいと思います。

もしも、鉛直荷重Pのみが作用している状態であれば、a-a断面における応力度分布は、全て圧縮となります。

また、水平荷重Qのみが作用している状態であれば、中立軸を境に応力度分布は次のようになります。

以上のことより、応力度分布を組み合わせて考えてみます。

上図において、①のルートは圧縮と圧縮を足して2σという圧縮応力度になっていることが分かります。一方、②のルートでは圧縮と引張を足しているので、右側の2σよりは小さい値のσとなっています。つまり、転倒させようとする力よりも上から押さえつける力の方が大きいので、a-a断面の全面に圧縮応力度が作用していることが分かります。

また、逆に、上から押さえつける力が弱ければ、建物は転倒(回転)しようとしますので、応力度分布は次のようになります。

以上の事項を念頭におくことによって、ただ機械的に解くよりも、組み合わせ応力度の問題が楽しくなるはずです。

次回は、本問を実際に解いてみたいと思います。
(結局、機械的に解くことになりますが。)

 

応力度について

卒業生のみなさんから、よく質問される応力度について、少しまとめてみたいと思います。今後の勉強の参考になれば幸いです。
まず、応力とは、部材の内部に働く力、すなわち内力のことであり、次のように4つ挙げられます。

①曲げモーメント(外力のときは、単に「モーメント」と記します。)
②せん断力
③軸方向力(圧縮)
④軸方向力(引張)

応力度とは、部材断面に分布している各応力のことです。とりあえず、難しい話は抜きにして、言葉の定義を考えてみたいと思います。
つまり、応力の種類が4つあったのに対応して、応力度も次のように4つ挙げられます(ちょっと、英語はあやしいですが…)。

①曲げ応力度(記号:σb)→ bending stress
②せん断応力度(記号:σs)→ shearing stress
③圧縮応力度(記号:σc)→ compressive stress
④引張応力度(記号:σt)→ tensile stress

ここで、例えば、σbの意味についてですが、σ(シグマ)が応力度を表し、bが曲げ(bending)を表していますので、すなわち、σb → 曲げ応力度となります。
あと、それぞれの応力度には、建築基準法で決められた許容値があり、その値のことを許容応力度といい、記号はfで表します。例えば、許容曲げ応力度は、fbとなります。

それから、重要なのが単位です!
単位は、いずれの応力度も単位面積当たりの力(N/cm2など)で表されます!!

以上のことを、公式と共にまとめると下記のようになります。ディメンションチェックも記しまたので、確認してみてください。