ザイデルの式

今回は、環境・設備から、換気問題におけるザイデルの式を使った基本的な問題を取り上げてみたいと思います。本問の内容は、近年において、二級建築士試験でも問われる傾向にありますので、しっかりとご確認頂ければと思います。ちなみに、この種の難易度の問題を、如何に取りこぼさずに得点できるかということが、本当に大切なことだと考えます。

学科Ⅱ(環境・設備)(1級過去問 H28)

定常状態における室内の二酸化炭素濃度を上限の基準である1,000ppm以下に保つために、最低限必要な外気の取入量として最も適当な値は、次のうちどれか。ただし、人体一人当たりの二酸化炭素発生量は0.024㎥/(h・人)であり、人体から発生した二酸化炭素濃度は直ちに室全体に一様に拡散するものとし、外気の二酸化炭素濃度を400ppmとする。また、隙間風は考慮しないものとする。

1. 20㎥/(h・人)
2. 30㎥/(h・人)
3. 40㎥/(h・人)
4. 50㎥/(h・人)

 

【解説】

ザイデルの式より、

Q=k/(Pi-Po)〔㎥/h〕

Q:必要換気量〔㎥/h〕

k:一人当りの二酸化炭素発生量〔㎥/(h・人)〕
→ 設問より、0.024〔㎥/(h・人)

Pi:室内空気の二酸化炭素許容濃度
→ 設問より、1,000ppm×10-6=0.001

Po:外気の二酸化炭素濃度
→ 設問より、400ppm×10-6=0.0004

以上のことより、Q=0.024/(0.001-0.0004)=40〔㎥/(h・人)〕となり、答えは3.となります。

ポイントは、ppmで与えられている数値を小数に直して代入するということです。ここで、1ppm=10-6(百万分率)であることは、もう一度確認しておきましょう。

あと、10,000ppm=1%という関係も押さえておきましょう。二酸化炭素の許容濃度が1,000ppm(0.1%)であるということと、一酸化炭素の許容濃度が10ppm(0.001%)であるということは、よく出題されます。
10,000ppm=1%という関係を覚えておくと、ppmと%との換算が楽になります。

 

おすすめの書籍

建築士試験の受験という観点から、特に推奨したい書籍をご紹介させて頂きます。ここで紹介する書籍は、特に独学されている方におすすめですが、資格学校に通われている方でも、一読しておいて損はないと思われます。

まず何と言っても、個人的に圧倒的におすすめしたい本が「ツボ」シリーズです。自分が受験していた頃は、構造系のものしかありませんでしが、今は法規のものも出版されています。構造設計の「ツボ」を読むことによって、構造という教科に自信が持てるようになりました。例えば、構造特性係数Dsについての考え方などが、非常に分かりやすく簡潔に書かれています。この本の特に気に入っている点は、全てが「簡潔」に書かれているところです。余計な解説はほとんどありません。ピンポイントでその問題を解くための、まさに「ツボ」が記されています。ご購入の際は、力学系と文章題系と2冊ありますので、気をつけて下さい。自分はどちらも購入しました。

次に助かった本は「法規のウラ指導」です。一度、建築士試験を受けられている方は十分にご承知されていると思いますが、本試験時において、法規の教科は本当に時間が不足します。特に一級建築士試験においては、30問を105分で解かなければなりません。1問あたり3.5分です。全ての選択枝を1枝1枝丁寧に吟味するなんてことは、ほぼ不可能です。つまり、如何に法令集を引かずに解くかということが重要になってきます。この本の良い点は、例題を解くのに必要な箇所の条文が全て掲載されているので、法令集を一切引かずに流し読みできるというところです。このことは、非常に大きなメリットだと言えます。法規の勉強は、どうしても法令集を引かなければならないので、面倒くさくて億劫になりがちです。しかし、この本はベッドの上とかで、気楽に眺めることができ、しかも、法令集を引かずに解くという習慣を身に付けることができます。一級建築士試験を受けようと思われている方にとって、買って損はない書籍だと思います。

ここまで、構造(力学含む)と法規のおすすめの書籍について書いてきました。
正直なところ、他の3教科(計画・環境設備・施工)についての推奨書籍は持ち合わせていません。強いて言えば、とにかく過去問集を参考にしたということでしょうか。もちろん構造と法規についても同様のことが言えますが、この2教科は配点が大きい(30点ずつの計60点)ので、ここで確実に50点とるために、上記の書籍を活用しました。

最後に、過去問集について記したいと思います。自分が使用した過去問集は、総合資格学院の「スーパー7」です。もちろん、他の資格学校や出版社のものでも全く構わないと思います。若干、年数としては不足していると思われますので、不安がある場合は「合格物語」というサイトを参考にしてみて下さい。自分は利用したことはありませんが、20年分の過去問が手に入るようです。興味のある方は、訪れてみて下さい。当サイトに関連機関のリンクがありますので、ご活用下さい。

あと、自分は製図試験に関しては、「ウラ指導」や「とるぞ!.Net」のお世話になりました。その辺の話は後日したいと思います。

 

組み合わせ応力度の問題 パート2

前回パート1からの続きです。
では、実際に問題を解いてみたいと思います。

H26年 一級建築士試験 学科Ⅳ(構造)の過去問です。

問 図-1のような底部で固定された矩形断面材の頂部の図心G点に鉛直荷重P及び水平荷重Qが作用するときの底部a-a断面における垂直応力度分布が、図-2に示されている。PとQとの組合わせとして、正しいものは、次のうちどれか。ただし、矩形断面材は等質等断面で、自重は考慮しないものとする。

 

※何かありましたら、ご一報下さい。

組み合わせ応力度の問題 パート1

H26年 一級建築士試験 学科Ⅳ(構造)からの出題です。

圧縮応力度と曲げ応力度との、いわゆる組み合わせ応力度の問題です。
よく目にする問題で、難易度としては、それほど難しくないと思います。

今回は、問題を解くのではなくて、この問題の意味について、少し深く考えてみたいと思います。

まず、下向きの鉛直方向の外力Pは、長期荷重を表しています。長期荷重とは、建築物に常時作用している荷重のことで、固定荷重や積載荷重などのことです。
一方、右向きの水平方向の外力Qは、短期荷重を表しており、臨時(非常時)の荷重、すなわち地震力や風圧力(台風など)のことです。

つまり、何事もない平和なときの建物には、鉛直方向の下向きの荷重のみが作用し、地震や台風などが発生した場合において、水平方向の力が作用することになります。

従いまして、上記の図-1の状況は、常時荷重に非常時荷重が組み合わさった状態ということが分かります(普通に考えれば、地震時ということになります)。

ここで、図-2の意味について考えてみたいと思います。

もしも、鉛直荷重Pのみが作用している状態であれば、a-a断面における応力度分布は、全て圧縮となります。

また、水平荷重Qのみが作用している状態であれば、中立軸を境に応力度分布は次のようになります。

以上のことより、応力度分布を組み合わせて考えてみます。

上図において、①のルートは圧縮と圧縮を足して2σという圧縮応力度になっていることが分かります。一方、②のルートでは圧縮と引張を足しているので、右側の2σよりは小さい値のσとなっています。つまり、転倒させようとする力よりも上から押さえつける力の方が大きいので、a-a断面の全面に圧縮応力度が作用していることが分かります。

また、逆に、上から押さえつける力が弱ければ、建物は転倒(回転)しようとしますので、応力度分布は次のようになります。

以上の事項を念頭におくことによって、ただ機械的に解くよりも、組み合わせ応力度の問題が楽しくなるはずです。

次回は、本問を実際に解いてみたいと思います。
(結局、機械的に解くことになりますが。)

 

応力度について

卒業生のみなさんから、よく質問される応力度について、少しまとめてみたいと思います。今後の勉強の参考になれば幸いです。
まず、応力とは、部材の内部に働く力、すなわち内力のことであり、次のように4つ挙げられます。

①曲げモーメント(外力のときは、単に「モーメント」と記します。)
②せん断力
③軸方向力(圧縮)
④軸方向力(引張)

応力度とは、部材断面に分布している各応力のことです。とりあえず、難しい話は抜きにして、言葉の定義を考えてみたいと思います。
つまり、応力の種類が4つあったのに対応して、応力度も次のように4つ挙げられます(ちょっと、英語はあやしいですが…)。

①曲げ応力度(記号:σb)→ bending stress
②せん断応力度(記号:σs)→ shearing stress
③圧縮応力度(記号:σc)→ compressive stress
④引張応力度(記号:σt)→ tensile stress

ここで、例えば、σbの意味についてですが、σ(シグマ)が応力度を表し、bが曲げ(bending)を表していますので、すなわち、σb → 曲げ応力度となります。
あと、それぞれの応力度には、建築基準法で決められた許容値があり、その値のことを許容応力度といい、記号はfで表します。例えば、許容曲げ応力度は、fbとなります。

それから、重要なのが単位です!
単位は、いずれの応力度も単位面積当たりの力(N/cm2など)で表されます!!

以上のことを、公式と共にまとめると下記のようになります。ディメンションチェックも記しまたので、確認してみてください。