令和二年度の製図試験について(総括)

今さらですが、令和二年度の建築士製図試験に合格されたみなさん、誠におめでとうございました。

一級建築士製図試験の秋田県における合格者は10名でしたが、そのうち2名は、うちの専門学校の卒業生でした。

ここで、令和二年度の製図試験における合格図面の傾向を、以下に極めて個人的に分析してみたいと思います。

【二級建築士製図試験】
「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい(木造2階建て)」
敷地内に建築できない箇所があったり、要求された室名が少しややこしかったりしましたが、難易度としては難しくない課題であったと思います。合格図面の傾向としては、大枠の設計条件①~③を満たしつつ、各図面の整合性がとれていることが挙げられます。特に、伏図と矩計図の精度については厳しく見られたと思っています。近年の傾向として、二級の場合は、構造的な部分がかなり重要視されていると思っています。逆に言うと、計画的な部分においては結構なミスがあっても受かっている印象です。あと、「図面のキレイさ」というものが、一級の製図試験に比して、合否に影響しているように思えます。

【一級建築士製図試験】
「高齢者介護施設」
もはや課題文がA2版ということはデフォルトのようです。課題文の読み取りだけで30分くらいは必要です。近年の傾向として、地盤の断面図が示されるようになり、地盤状況に応じた基礎形状や地盤改良について考えなければならなくなりました。加えて、計画の要点において、略図を用いた説明が求められ、計画・構造・設備についての明確な設計意図と、それぞれの整合性が厳しく問われます。

今年度のポイントは、何と言っても「ユニット型」だったということに尽きると思います。個人的な見解として大きく合否を分けた箇所は「ユニット玄関」の計画であったと考えています。課題文の要求としては、ユニットA~C及び居宅サービスの玄関をそれぞれ専用に配置しなければなりませんでした。つまり、玄関が4つ必要だったということです。ここが曖昧な計画においては、極めて合格しづらい状況であったと思われます。他にも、「法的採光」や「廊下の有効幅員」、採用した耐震計算ルート、インフルエンザやノロウイルス対策についての要求等々、プチびっくり玉が幾つかありました。

が、やはり今回の一番のポイントは「ユニット型」の介護施設であったということです。まずは、課題文が一番に要求していることを押さえることが最重要です(今回の「ユニット玄関の計画」や平成29年のリゾートホテルにおける「客室の眺望」など)。近年は、ランクⅢとⅣの割合が大きく、未完・法令違反・空間構成の足切りの場合は、容赦のない措置が講じられている印象です。

 

以上、簡単ではありますが、極めて個人的な見解でした。